AIは「コンサルタント」という仕事をなくすのか?

DX

「AIによってコンサルタントの仕事は不要になる」という言説があるようです。
特に就職・転職活動中の方は気になっているポイントかもしれません。

結論から申し上げると、AIはコンサルの業務を代替しないと考えられます(もちろん、他の業種と同様に業務効率化・一部代替の影響はあると想定されます)。
主な理由について説明していきます。

AIがコンサル業を代替できない理由①意思決定者はAIと人間のどちらを信じるか?

例えば大企業の社長の立場で、部下の経営企画部長がこんな提案をしてきたらどう思うでしょうか?
「前回の3か年中期経営計画は6000万円、3か月をかけて大手コンサルと作りましたが
AIの性能が上がったので、今回はAIだけ活用して作ろうと思います。コストは年20万円程度です」

以下の思いが駆け巡るはずです。

  • コスト・時間は魅力的だけど、本当にやり方を変えてしまってよいか?
  • 出てきた経営計画を本当に信用してよいか?
  • 業界の動向や将来像はどれだけ考慮されるか?
  • 失敗したときの責任は誰がとるのか?(社長の私だよね?)

AIの実力は社会の共通認識となりつつありますが
AIがコンサルを淘汰するためには、意思決定者がしっかりAIを信じることが必要になります。
上記はとても極端な例であり、実際には徐々にAIも信頼を勝ち得ていくことが期待されますが
当面は「ブラックボックスの機械よりも、人間の成果をもって意思決定したい」という意見が主流ではないでしょうか。

一般的なコンサルティング契約では、意思決定の責任はクライアント企業側にあるとされることが多いです。

AIがコンサル業を代替できない理由②社内の情報を正確にデータ化できない

会社の中には、データ化・言語化されていない様々な情報があります。
例えば「フラットな文化/上司のご機嫌取りが最優先の文化」「従業員の働きがいが何か」「現場での細かな工夫による効率化」「立地・商圏の独自性」「保有している知的財産の展開可能性」「営業スタイルの違い」「自社と他社との違い」など、枚挙にいとまがありません。
働いている人にとっては当然のことでも、肌で感じる性質のものは積極的にデータとして保有されていないケースがほとんどです。つまり、自社の情報すらAIにインプットしきれない可能性が高いということです。自社にとって受け入れがたい成果物が出てくることになりかねません。

これがAIではなくコンサルタントであった場合、関係者のインタビュー・打ち合わせなどを進めていく中で会社ごとの風土・特徴、小さな違和感が見えてきます。
必要に応じて臨機応変に情報を引き出しながら、成果物の中でケアするべきポイントを明らかにし、企業の特性や社内の力学を踏まえた成果物につなげていくことが可能です。

AIがコンサル業を代替できない理由③コミュニケーション・説明が難しい

2024年夏現在において、多くのAIはアウトプットを出すプロセスを明確に説明してくれません。コンサルティングを依頼して出てきた成果物について「何を、どのような観点で検討したのか」「なぜそうなったのか」が見えなければ、その後の議論、ブラッシュアップの余地が大きく狭まってしまいます。
指示を変えればアウトプットも変わりますが、その改変の根拠も見えづらいので十分に納得するのは難しいかもしれません。

コンサルタントとして人間が業務提供することによって、成果物のイメージ・大枠を提示しながら認識のすり合わせと軌道修正を進め、意思決定者は成果物の根拠を十分に理解することが期待されます。

AIがコンサル業を代替できない理由④人数増員にならない

コンサルタントに依頼する目的の一つとして、「担当人員数を確保したい」ことも挙げられます。
通常業務に加えて、プロジェクト期間中は追加の業務が発生することになるため
人間のコンサルタントは物理的にもフレキシブルに動けますが
実態を持たないAIには、人間の物理的な業務を代替するのは困難です。

AIがコンサル業を代替できる理由業務の進め方の変化に伴う人件費削減は想定される

ここまで「コンサル業はAIに代替されない」という点を記載してきましたが
例えば以下の点において、コンサルタントが担ってきた業務がAIに移管される動きは進むでしょう。

  • 既にデータ化されている情報の分析・予測
  • 簡単なインターネット調査
  • 教科書レベルの情報の整理・伝達
  • 各種資料作成
  • プロジェクトマネジメント
  • ほか

「ありふれた情報の受け売り」だけのコンサルティングは淘汰されてしまうかもしれません。

まとめ

コンサルタントの仕事も例にもれず、一部の業務はAIによる代替を受けると考えられます。

これによってコンサルタントは路頭に迷うかというとそうではなく、「AIを活用してコンサルティング業務を効率化・高品質化する」というポジティブな影響が期待されます。
クライアント企業にとってはAI利活用を内製化できれば、コンサルタントに依頼していた業務の一部(データ分析、資料作成等)を内製化し、コストダウン又は高度化することも期待されます。

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