はじめに
AIは瞬く間に世の中に浸透しました。
生成AIのChatGPTのサービス開始は2022年の11月。
今でもよく覚えているのが2023年の2月に参加した会議の中で、ある社長が「ChatGPTね、すごく面白いよ」と話をされたとき、会議室の8名程度の中で、半分以上が「何それ?」という顔をしていました。
しかし今では、ビジネスでお会いする方々で「生成AIを一度も使ったことがない」という方は本当に少なくなりました。Google検索結果にもAIによるサマリが出てきたり、X(Twitter)で生成AIがファクトチェック(後述)していたりと、無意識にもAIの生成物に触れる機会が増えてきました。
※この記事は原則として、私がこれまでの経験・知見をもとに想像・空想・妄想した未来について書いています。
想像①AI生成情報の乱立と、インターネット上の情報の質低下
(現在)SEO対策への生成AIの活用
最近注目されている用途の一つが、SEO対策としての生成AIです。
例えば企業経営に関連する「経理DX」「人事評価制度の作成」などでGoogle検索してみると、初歩的な基礎知識から丁寧に解説してくれるウェブサイトが多く見つかります。(念のため先に補足しますが、これらの検索キーワードでヒットしたサイトが生成AI製である、と述べる趣旨のものではありません。)
上位に表示されるページタイトルや説明文は、ユーザーがクリックしたくなるように洗練されています(裏を返せば、検索結果に似たような言い回し・表現が並んでしまう原因にもなっています)。
検索サイトに表示されるサイトの順位を決めるアルゴリズムには様々な要素がありますが
ウェブサイト検索から多くのユーザーを集めるためには、一定程度のWebページコンテンツの量が必要となります。更新頻度が低すぎないことも検索結果上位表示の要素であると言われています。
上位表示、見込み顧客獲得のためにコンスタントに質の高い記事を作成することは結構な人的労力がかかる仕事です。
生成AIは文章を構成し出力することに長けているので、このSEO目的の記事作成にとても強力な力を発揮します。
例えば上位表示させたい検索キーワードを指定して、「魅力的な記事タイトル」「検索サイトに表示する説明文」「千文字を超えるコンテンツ本文」を全部生成させることも可能です。構成・見出しも分かりやすく出力されるので、人が何時間もかけて作成作業を行ってきたものが、「AIの出力結果を張り付けてアップロード」するだけで大量の記事を量産することが可能となりました。SEO目的のAIと謳ったサービスも実用化されています。
(現時点の一般的な無料版生成AIの性能ではある程度人の目によるレビュー、手直しが必要なレベルだと思います)
(将来)無個性なウェブサイトの乱立?
私の想像・懸念は「多くの企業が検索結果上位表示を狙って生成AI作成の記事・Webページを乱立させ氾濫したらどうなるか?」ということです。
生成AIの出力結果がすべて正しい内容だとしても、検索結果画面が「AIが作った、似たり寄ったりな内容のページ」ばかりで埋め尽くされることは遅くとも来年には問題視されるのではないかと考えています。
そんな検索結果からAIがサジェストする内容、どんな意味があるんでしょうか。
ちなみに私はこだわりが強いタイプなので、掲載しているブログは(今のところ)AIの助けを一切借りずに記述しています。
想像②悪意を持ったAIへの干渉
データポイズニング
私の想像というか、既に各所で一般的に指摘されていることなのですが
AIの出力結果に影響を与える意図の情報の流通が増えるのではないかということです。
「嘘も100回言えば真実になる」が目に見える形で現れます。
あまり害がない例を挙げると
例えば、架空のビジネスマンの経歴(「10か国語を流暢に操る」「5社の内資系大手企業でCFOを歴任」など)やそれを褒め称える内容を掲載したウェブサイトを50個作っておけば
数か月後にある会社の社長が「我が社の海外展開にあたって、スカウトすべきCFOの候補を挙げて」と指示したらAIはその架空の人物も紹介してくるでしょう。
「架空の真実を作り出す」「悪質なデマが物量で真実を凌駕し、AIインプット情報のマジョリティを占める」など、現実世界で人間が不利益を被るようなケースは、現在でも既に発生していると推測されます。
AIのファクトチェックとは?
本記事の冒頭で、X(Twitter)で生成AIがファクトチェックを行っていることに言及しましたが、Grokは多くのポストの情報をインプットされるわけなので、X上の情報がデマだらけなのであれば、デマ発信者の情報を正としてしまい、本来正しくないデマ情報の肩を持ってしまう可能性があることは容易に想像できるわけです。
この仕組みを「ファクトチェック」と呼ぶのは危険だと思います。
想像③生成AIの出力結果は、現在が一番高品質なのでは?
「AIを活用した情報の量産」「悪意のある情報の流布」の影響はAIが普及するほど受けやすくなるため
低品質な情報が広がる前で、かつ、生成AIの精度が高まっている今が一番生成AIの品質が高いのではないかと想像しています。
生成AIが出力結果を繰り返し学習して出力を続けたら、ハウリングのように変なアウトプットになってしまうのでは?というイメージです。
想像④生成AI対策の強化
ネガティブな想像ばかりを描きましたが、これらへの対抗策が講じられる未来も想像しています。
SEO:オリジナリティの重視(検索エンジン)
昔のホームページのSEOはある意味シンプルで、「本文にキーワードをたくさん入れれば入れるほど、上位に表示されやすい」「metaタグの中に関係するキーワードを入れれば入れるほどよい」「他のドメインからのリンクが多ければ多いほど上位に表示されやすい」など、やればやるほど評価が変わるというものでした。
記憶に新しい方もいるかもしれませんが、検索エンジンの上位表示アルゴリズムはその他にも色々と変遷があります。(ニュースでも話題になったごくごく一部を掲載)
- 「センシティブな情報(医学情報など)の誤情報」を防ぐため、これらの情報を取り扱うページの上位表示ルール厳格化
- 「まとめサイト」「キュレーションサイト」等は大きく掲載順が低下
最近では「ユーザーにとって価値のある情報」、E-E-A-T「Experience(経験)」「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)」「Trustworthiness(信頼性)」が重要とされていますが
近い将来これらと同列に「Originality(独創性)」が昇格し、生成AI作成のウェブサイトは軒並みペナルティを受けるのでは?と想像しています。(どのように判定するかはさておいて)
AI判定AI
「生成AIによって作成された文章(又は画像、音声等)か?」を判定するAIは今も作られていますが
現在よりも精度高く、生成AIかそうでないかを判断する重要性が高まり、判定するAIが大きく普及するのではないかと想像しています。
最後に:想像⑤「人の目」の価値再評価
色々と想像を書きましたが、今後インターネット上の情報が更に複雑化し、正誤判断が難しくなることを完全に防ぎきるのは不可能でしょう。
個人の、そして社会の情報リテラシーを高めていくことはこれまで以上に重要になると思います。
私自身も、「情報リテラシーの向上・啓発」を一つの個人的なミッションとして、様々な形で価値ある情報提供に貢献していきたいと考えています。